界 鬼怒川

敷地は鬼怒川温泉郷のほぼ中央近に位置する渓谷沿いにあり、かつての水力発電所建設で生じた土砂岩石の埋め立てにより造成された台地を利用して、企業保養所として独自に開発された経緯がある。このため、渓谷両岸にホテル群が林立する鬼怒川温泉特有の景観とは大きく異なり、元来の自然と保養所建設当時に植えられた樹木とが、30年以上の年月を経て成長、一体化することで、深い緑に囲まれた静謐な環境が形成された。

設計にあたっては、この恵まれた自然環境を活かして、周辺の類似施設には無い温泉旅館の特徴と魅力を表現すること、また事業計画上の必要客室数を確保しつつ、快適性やゆとりある雰囲気を損なわずに総面積・工事費の縮減を図ること、などが与条件となった。

切り通しの長いアプローチを経て、車を下りたゲストは、待ち合いとなるエントランス棟から急斜面をスロープカーで登った後に初めて滞在中を過ごす主要施設に至る。建物は中庭を中心に低層の建物群を開放廊下と回廊でつないだ分棟回遊形式となっており、ロビー、食事室、客室、大浴場などのブロックが、それぞれ異なる環境と景観に向き合うように配置されている。

建物を低層とすること、廊下や回廊を屋外開放とすること、客室面積を極限まで圧縮する一方で水廻りの面する広いバルコニー空間に組み合わせること、既存樹木の伐採を避け可能な限り移植と再配置を行うこと、等々の手法工夫が、工事費の縮減を図るだけに留まらず、この建築の魅力を特徴付け、温泉旅館に相応しい日本的な印象を強調するものとなるように意図した。

概要/
所在地 ; 栃木県日光市鬼怒川温泉滝
主要用途;旅館
工事種類;新築工事
延べ面積;4,470.36m2
設計期間;2013年8月〜2014年5月
工事期間;2014年6月〜2015年8月
設計; 今村幹建築設計事務所
    東出明建築設計事務所
    株式会社オーク構造設計
    中島龍興照明デザイン研究所
    アースワークス・景観工房
    ランドクリエーター